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MUSIC LAND -私の庭の花たち-

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「メビウスの輪」10

私の頭の中の消しゴム

幸恵は、出身高校のスクールカウンセラーに内定したらしい。

お嬢さん学校だから、そんなに問題ないかもしれないけど、

今の女子高生はどうなんだろう。

まあ、幸恵もいつまで勤めるかわからないしな。

それより俺は自分の仕事をきちんとこなして認められないと。

社長の愛人の息子の啓一なんかに負けるものか。

何のために彼女の父親の会社に入ったのか分からなくなる。

次期社長になれないまでも、重用はしてもらわないと。

でも、野心丸出しでは、警戒されてしまうかも。

幸恵を幸せにするために結婚したいのに、

目的が逆になりそうで怖い。

仕事もなんとか軌道に乗ってきたから、

焦ることはないのかもしれないが、

また啓一に追い抜かされそうで、

気持ちに余裕がない。

幸恵とデートする時間もないし、

メールや電話もなかなかできない。

「仕事と私どっちが大事?」

なんてこと言う女じゃないけど、

あまり放っておいてもなあ。

彼女も就職先が決まり、

心理の修士論文を書いてて忙しいから、お互い様か。

それにしても、俺にこの会社に就職して、

結婚を父親に認めてもらいたいと言ってたくせに、

このごろはそんなこと言わない。

自分の勉強や仕事のことで頭が一杯なのだろうが、

一体どうなっているんだろうか。

このまま離れていっても仕方ないということか。

俺の人生はどうなるんだ。

もっと大手に就職できたんじゃないかと思ってしまう。

まあ、ここで伸し上がればいいことだよな。

とにかく今はお互い自分の足元を固めるしかないか。

二人で向き合うのではなく、

同じ方向を向いていればいいのだから。

それにしても、彼女も物好きだよな。

自分自身がアダルトチルドレンだというのに、

人の悩みまで聴こうなんて。

そんなに背負いきれるものなのか。

俺だったらとてもごめんだな。

自分と彼女だけで精一杯だ。

彼女のほうが話を聴いてくれたけど、

俺も彼女の家の事情は知っている。

だからこそ、二人で幸せな家庭が築きたいのだ。

いつまでも、仕事で足止め食ってては、

結婚なんて先の先だな。

一人前になってからと思うと、

彼女を待たせることになる。

ひとつ年上だし、いいとこのお嬢さんだから、

見合いの話とかもあるだろう。

断ってくれるとは思うけど。

俺にまで話があるくらいだからな。

取引先の社長に気に入られて、

娘をどうかと言う。

この会社より大きい会社だ。

天秤にかけたりして・・・。

でも会ったこともない女性と結婚する気にはなれない。

たとえ幸恵が社長の娘でなくても、

俺は結婚したいと思う。

逆玉狙いのわけではない。

まあ、両方手に入るのは悪くないけど。

いつになったら、幸恵も許してくれるのか。

忙しくてそれどころではないが、

逢えばやはり抱きたくなる。

許してくれないのなら、逢わなくてもいいか

などとも思ってしまうのだ。

それでも、時々無性に会いたくなる。

そんな時、メールや電話をするのだが、

なかなか返事が来なかったり、出なかったりする。

ますます想いが募るから、

しないようにしようなんても思ってしまう。

ますます離れてしまうじゃないか。

俺の方が彼女より想ってるのではと思うと、

悔しいが仕方ない。

俺から申し込んだんだしな。

こんなんじゃ結婚しても同じかな。

俺は親から愛されなかったせいか、

彼女からも愛されてるという自信が持てない。

だから、愛されてる証拠が欲しいと思ってしまう。

でも、今の彼女にそれを求めても無駄だろう。

彼女も今は余裕がないからな。

一生懸命はいいけど、視野が狭いのだ。

カウンセラーになれば、きっと女子高生のために

必死になってしまうのだろう。

男子学生がいなくて良かった。

大学のときも、パートリーダーをやってたからか、

脳貧血で倒れるまで歌ってしまう。

録音してた時、中断されたことがあった。

途中で座るなりすればよかったのに。

一途で可愛いけど、怖い面もある。

清姫みたいだよな。

俺に夢中になってくれる分にはいいけど、

そんなに愛されてるとは思えない。

幸恵は感情表現を抑えているのだろうか。

何を考えているのから分からないところがある。

人前では決して甘えないし、冷たいくらいだ。

そのくせ、二人になると甘えてくるから戸惑ってしまう。

それで許さないのは酷だよな。

猫のようにするりと身をかわして逃げてしまう。

なんかトラウマでもあるのかな。

俺だけではないみたいだから。

問い詰めても話はしないだろう。

まだ殻を身につけているから。

いつになったら、俺に身も心も許してくれるのか。

続き


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